現代アーティスト
岩崎貴宏さん インタビュー

OBインタビュー1人目は広島市立大学1期生の岩崎さん。卒業後からアーティストとして活動されており、今年のヴェネチアビエンナーレ日本代表に選出されるなど、世界的な注目も集めています。そんな岩崎さんが制作や展示をする上で考えてきたことをお聞きしました。

今でも広島で作家活動をされていますが、その理由を教えてください。

作家は会社や場所に縛られる生き方ではないのに、卒業するとなぜ皆そろって都市部に行くのだろうという疑問から始まり、地方都市で作家として生活している前例や成功例が少ないことが原因かなと思い、広島で作家業を成立出来る前例になれればとも考え、試行錯誤しながら実践を続けています。
誰もやったことが無いことを成すのは大変ですが、作家にはそれにチャレンジするミッションが課せられているように思います。
なにより、世界から見て、広島という地が持つ文化的/歴史的ポテンシャルは作家にとって計り知れないと考えています。

日用品や日常的なものを用いて作品を作られていますが、そういった身近なものに目を向けるきっかけはなんだったのでしょうか。

学生時代、お金がなかったので、無理をして高価な画材を買うことを諦め、身近で安価な石鹸や文房具、古本などで作品を作る実験を始めました。
子供のとき洋服屋から貰ってきた厚紙や、空き箱で紙工作に没頭していましたし、洗濯バサミを飛行機に見立てて遊んだりもしていました。技巧習得を重視する日本の美術教育で忘れていましたが、そもそもお金がなくても作りたい物を楽しんで作れることを思い出しましたし、見慣れた日用品を使えば一般の人にも容易に興味を持ってもらえます。これらは技術や技巧に頼らない誰もが持っている想像力の基本だと思っています。

Out of Disorder (Pink Deck brush), 2013 Photo Shinya Kogure ©Takahiro Iwasaki,Courtesy of URANO
Out of Disorder (Pink Deck brush), 2013
Photo Shinya Kogure
©Takahiro Iwasaki,Courtesy of URANO

展示物として作品を人に見せるうえで、岩崎さんが意識していることを教えて下さい。

特に作品との距離感を意識しているように思います。近寄ったり、離れたり、しゃがんだり、息を殺して目を凝らしたりと、鑑賞者は複数の眼で作品を「観察」し、私の残した痕跡や意図を探ろうとします。これらひっくるめてその人の「体験」となって記憶と結びつき、日常生活に戻ったあとも、ふとした瞬間に記憶が呼び起こされることがあるように思います。このように複眼的な視点で、世界の驚きの一端を提示出来ればと考えています。

岩崎さんは今年度ヴェネチア・ビエンナーレに作品を出展されますが、世界へ活動を広げていく中で意識の変化はありましたか。

はい。まず、ぼんやりとした希望を現実的にどうすれば実現出来るのか、それを実際にやってみようとすることが重要です。私の場合、実際に世界へ活動を広げようとした際、日本が島国故に、作品輸送の問題が最大の障壁になることが分かりました。どんなに良い作品を作っても質量を伴う以上、それを海外輸送するにはマネージメント上、圧倒的なリスクが伴います。なので、質量輸送に頼る手法を一旦捨て、私の知識と経験だけを輸送し、現地の素材で展開すること、或はスーツケースに圧縮縮小させたものを、手荷物で運び現地で解凍・展開する、という手法に切り替えることがこの壁を破る最適解だと考えました。小さな針の穴から覗いた方が、遠くの世界がはっきり見えるようなものです。

最後に、今年参加されるヴェネチア・ビエンナーレについてお教えください。

ヴェネチア・ビエンナーレはイタリアのヴェネチアを舞台に120年以上続く世界的な現代アートの国際展です。ビエンナーレとはイタリア語で2年周期を意味し、2年に一度行なわれています。
各国パビリオンで国別展示の行なわれるジャルディーニと、企画展を行なうアルセナーレがあり、私はジャルディーニの日本館で個展をします。ビエンナーレは世界中で開催されていますが、特にヴェネチア・ビエンナーレは、スポーツでいうオリンピックのようなものなので、私のような経験の少ない作家が選ばれるのは稀なことであり、とても運が良いと思います。私は20年前、学部4年生の時にリュックを背負ってイタリアまで見に行き、いつかここに参加したいと強く思っていました。展示案は私だけではなく、キュレーターの鷲田めるろさん(金沢21世紀美術館キュレーター)と私で共に作り上げたものです。
広島市立大学の卒業生がヴェネチア・ビエンナーレに参加するような機会はなかなか無いことだと思いますので、是非この機会にヴェネチアを訪れて作品を観ていただけると嬉しいです。

Drawing for Reflection Model, 2016 ©Takahiro Iwasaki,Courtesy of URANO
ヴェネチアビエンナーレに出展される予定の作品のスケッチ。REFLECTION MODEL (Itsukushima) と同じく厳島神社がモチーフだが、社殿が災害で壊れた際のものになっている
Drawing for Reflection Model, 2016
©Takahiro Iwasaki,Courtesy of URANO

第57回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展

「逆さにすれば、森」
作家:岩崎貴宏
キュレーター: 鷲田めるろ (金沢21世紀美術館)
2017年5月13日 - 11月26日
第57回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展 日本館, ジャルディーニ、ヴェネチア, イタリア

http://www.labiennale.org/en/Home.html

REFLECTION MODEL(Itsukushima), 2013-14 Photo Kuniya Oyamada ©Takahiro Iwasaki,Courtesy of URANO
REFLECTION MODEL(Itsukushima), 2013-14
Photo Kuniya Oyamada
©Takahiro Iwasaki,Courtesy of URANO