デザイン工芸学科 漆造形分野
池森夢子さん インタビュー

池森夢子さん

漆造形ってどんなところですか?

漆造形分野に進むと初めに道具作りや刃物の仕立て方を学びます。そして木地調整から磨き約40行程に及ぶ本堅地(ほんかたじ)や蒔絵(まきえ)、卵殻などの加飾方法を習得していきます。3年次になると宮島轆轤(ろくろ)を学び、さらに表現方法を増やしていきます。
また、年に何度か職人さんが来られ、目の前で講義や実演をしてくださったり、今年は大学で育てている漆の木を実際に掻いて漆を採取しました。
漆についての知識や技術を一から身につけることができます。
奥が深く、漆という素材について向き合えば自分に合った色んな表現ができるのでそこがおもしろいと思います。

これまでの制作活動について教えてください。

今まで扱ったことのなかった素材ですので、初めは基礎を学ぶことで精一杯でした。一通り教えてもらったところで自分の作品というものをつくったのが3年生からです。
漆の質感を身近に感じることができる器を中心に制作をしています。
3年次のテーマ制作では麻布を漆で貼り合わせた乾漆という技法でお皿をつくり、色漆で昔話のイラストを描いて仕上げました。

色漆の魅力を教えてください。

漆と聞くとみなさんは何色を思い浮かべるでしょうか。
黒や赤のイメージの人が多いと思います。わたしもかつてはそうでした。
高校生のころに見に行った伝統工芸展の作品で漆の黒の中に鮮やかな青色の漆が研ぎ出された表現がとても綺麗と思ったのと同時に、それが漆と知った時は衝撃を受けました。化学塗料にはない深みのある色の表現ができるところが漆の魅力だと思います。

轆轤について教えてください。

広島には宮島轆轤という伝統工芸があります。
3年次に宮島の伝統工芸士の方に来ていただいて刃物つくりから教えていただきました。回転させた木地に刃物を当てて形を作っていくのですが、大きいサイズになるほど中心からぶれやすく、刃物が深く入りすぎると台から外れて吹っ飛んでしまいます。卒制では約9寸のお皿を挽くにあたって先生につきっきりで見てもらいました。ぶれないようにしっかり固定すること、切れる刃物を仕立てる大事さを学びました。

池森さんの卒業制作の制作過程を一部ご紹介します。

宮島轆轤です。今回の作品は栃の木を使っています。
宮島轆轤です。今回の作品は栃の木を使っています。
埃が入らないよう気をつけながら漆を平筆で塗る工程です。
埃が入らないよう気をつけながら漆を平筆で塗る工程です。
耐水性のある紙やすりと回転轆轤を使っての水研ぎ工程です
耐水性のある紙やすりと回転轆轤を使っての水研ぎ工程です。
螺鈿という装飾技法です。貝殻の内側にある虹色光沢を持つ真珠層の部分を使います。漆を塗り乾く前に魚の形に切った貝を貼っていきます。
螺鈿という装飾技法です。貝殻の内側にある虹色光沢を持つ真珠層の部分を使います。漆を塗り乾く前に魚の形に切った貝を貼っていきます。
銅擦り粉や磨き粉と油を指につけて磨き上げを行います。
銅擦り粉や磨き粉と油を指につけて磨き上げを行います。
(左)磨き前 (右)磨き後
(左)磨き前 (右)磨き後

卒業制作について教えてください。

ひとつひとつ開けた時にイラストが変わる重箱を作ろうと思ったのですが、最近では馴染みのないものになってしまったので、重ねられるお皿にしました。
前回は乾漆でしたが、作家として漆器を作っている方に木と漆の相性はいいので木でやったほうがよいと言っていただいていたので、卒制では轆轤で木を挽いて作ることにしました。
お皿の内側には海のイメージで色漆を中心に螺鈿や卵殻、蒔絵も含めた加飾を施しました。砂浜のザラザラ感や海のツヤツヤ感を漆のどういった技法を使って仕上げるか悩みました。お皿として使うものなので貝や卵が取れてしまわないようにも気をつけました。
うっすらとチョウチンアンコウがいたり、裏側に人魚を描いてみたり、色んな海のイラストをそれぞれのお皿に表現するのは楽しかったです。ぜひ会場でご覧ください!

展示作品「海洋プレート」
展示作品「海洋プレート」